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【研究成果】酸化マグネシウムによる亜セレン酸吸着挙動とメカニズムを解明

2019/06/25

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水質地球化学研究室の福士准教授と宮下駿さん(2017年度博士前期課程修了)は、クニミネ工業株式会社、デンマーク工科大学、東京大学と共同で、酸化マグネシウムによる溶存有害陰イオン除去挙動とメカニズムを解明し、その成果が英文誌「Journal of Hazardous Materials」に掲載されました。

近年火力発電所などの工業廃水処理において、セレンなど有害陰イオン種の除去方法の確立が強く望まれています。本研究では高比表面積酸化マグネシウムは高pH条件において、これまで知られるどの鉱物系吸着材よりも優れた亜セレン酸吸着能を示すことを見出しました。さらに透過型電子顕微鏡と放射光施設を用いた先端分析から、亜セレン酸除去のメカニズムは、酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムに相転移する際の微量元素共沈であることを明らかにしました。

雑誌名: Journal of Hazardous Materials
論文名: Superior removal of selenite by periclase during transformation to brucite under high-pH conditions
発表者名: Fukushi K, Miyashita S, Kasama T, Takahashi Y, Morodome S.
論文はこちら(出版社のページ)

Natureにジェンキンズ助教のインタビュー記事が掲載されました!

2018/10/15

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研究拠点としてみた金沢という視点でNature編集部からジェンキンズ助教がインタビューを受け,記事になりました.記事の概要は以下の通りです.

江戸時代から続く街並みや伝統芸能文化も色濃く残る金沢に住む人々は,学問や文化に理解があり,高い教養を持っている.その証拠に,小中校生を対象とした全国規模の学力テストでも石川県は常に上位に入っている.そういう学問を好む風潮は,金沢の地で研究をする者にとってもありがたい.加えて,ほどよく東京や大阪,名古屋などの大都市から離れていて,自然も近く,研究に集中できる環境が整っている.ジェンキンズ助教は,海底熱水噴出域などの極限環境への生物進化が,海底に沈んだ大型脊椎動物の腐敗環境の適応によってなされたとの仮説に基づいて研究しています.近年,白亜紀の地層からウミガメ遺骸の腐敗環境に生息する生物を発見し,その検証のために能登半島沖にウミガメ遺骸を設置し,海洋での腐敗研究を展開しています.このような腐敗実験を都会の近海で実現するのは難しく,ほどよく自然が残された能登,そしてそこから近い金沢だからこそできたのでしょう.地方都市ではあるが,文教都市である金沢の利点を活かした研究が,生命の進化を解き明かすでしょう.

記事は以下のページでお読みいただけます.掲載された写真で,腐敗中のウミガメの脇をスキューバダイビングで泳いでいるのは地球学コース修士2年生の鈴木碧さんです.

詳しい内容はこちらから(Natureのページ)

【研究成果】モンゴル・エルデネト鉱山周辺の河川と池でのモリブデン溶出機構を解明

2018/07/30

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水質地球化学研究室のSolongo Tsetsegeeさん(博士後期課程2年)らはモンゴル・エルデネト鉱山周辺の河川と池でのモリブデン溶出機構を解明し、その成果がMINERALS誌に掲載されました。

2017年からモンゴル国立大学・東京大学と共同で、世界最大規模の銅-モリブデン鉱山(エルデネト鉱山)地域での有害元素の環境動態調査を行っております。エルデネト市を流れる河川では、重金属濃度は極めて低いものの、モリブデン濃度は結構高いです。本研究はこの原因解明を目的として、エルデネト地域の河川と池から採取した堆積物に含まれるモリブデンの存在状態を化学抽出分析とSPring-8を利用した放射光分析によって調べました。その結果、モリブデンは堆積物中の鉄酸化物にかなり弱い力で吸着して存在することがわかりました。

溶液にとけているモリブデンはあまり堆積物に吸着せず、吸着したとしてもちょっとした水質変動により比較的容易に水に溶出してしまいます。その結果、河川のモリブデンは強く吸着しがちな重金属などよりも高い濃度をしめすと考えられます。

雑誌名: MINERALS
論文名: Distribution and chemical speciation of molybdenum in river and pond sediments affected by mining activity in Erdenet city, Mongolia
発表者名: Solongo T, Fukushi K, Altansukh O, Takahashi Y, Akehi A, Baasansuren G, Ariuntungalag Y, Enkhjin O, Davaajargal B, Davaadorj D, Hasebe N
論文はこちら(出版社のページ:オープンアクセス)

【研究成果】アルカリ塩湖の水質は準安定な含水炭酸塩鉱物にコントロールされる

2018/07/30

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水質地球化学研究室の福士准教授と松宮春奈さん(2017年度卒業)は、アルカリ塩湖の水質制御機構を実験と理論により予測し、その成果が米国化学会発行の英文誌「ACS Earth and Space Chemistry」に掲載されました。

大陸内部の乾燥地域には、高塩分・高pH・高炭酸イオン濃度の水質をもつアルカリ塩湖が広範に分布しています。アルカリ塩湖では含水カルシウム炭酸塩であるモノハイドロカルサイト(MHC)の生成が頻繁に認められますが、MHCの生成条件、塩湖の水質に及ぼす影響、さらに塩湖における炭素循環に果たす役割はよくわかっておりませんでした。

水質地球化学研究室では、これまでにMHCの合成実験、合成試料の放射光分析およびMgを含有するMHCの第一原理計算を行い、MHCの生成にはMgを必要とすること、MHC中のMgは主に別相としてMHCに付随する非晶質炭酸マグネシウム(AMC)であることを示してきました。本研究では、塩湖環境を模擬した溶液中におけるMHCおよびAMCの溶解度測定を行い、自然界のアルカリ塩湖の水質はMHCおよびAMCの生成過程によって制御されていることを突き止めました。

本研究は従来見過ごされていた準安定相が普遍的にアルカリ塩湖の水質を支配することを示しました。準安定相であるMHCやAMCは時間とともに安定な炭酸塩鉱物へと自発的に変質します。MHCおよびAMCとの平衡により水質が支配されるアルカリ塩湖は、これら準安定相の変質過程を介して二酸化炭素を自発的・不可逆的に堆積物に固定する機能を持つことが予想されます。

雑誌名: ACS Earth and Space Chemistry
論文名: Control of Water Chemistry in Alkaline Lakes: Solubility of Monohydrocalcite and Amorphous Magnesium Carbonate in CaCl2–MgCl2–Na2CO3 Solutions
発表者名: Fukushi K, Matsumiya H
論文はこちら(出版社のページ)

地球は石でできているのだ―地球と石川の石ころつながり―

2018/07/24

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金沢大学の地域連携センターの夏休み企画が今週末に開催されます.
森下教授による身近な石と地球の関連に関する講演です.
詳しい内容,開催日時は以下のHPからご覧ください.

金沢大学サテライトホームページ

Facebookで日々の活動を報告しています

2018/06/21

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地球社会基盤学類地球惑星科学コースのFacebookでは日々のことから研究成果,授業風景まで様々な記事を投稿しています.地球惑星科学コースの雰囲気を知りたい人はぜひチェックしてください!

金沢大学・地球学コースFacebook
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日本海と東シナ海の深海掘削堆積物の年代層序を構築

2018/04/16

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海洋環境変遷学研究室の佐川助教は,国際プロジェクトである統合国際深海掘削計画(IODP)で採取された日本海と東シナ海の深海掘削堆積物について年代層序を構築し、その成果がProgress in Earth and Planetary Science誌volume 5に掲載されました。

日本海や東シナ海の海底堆積物には、過去に東アジア地域や地球全域で起こった環境変動の記録が詳細に残されています。このような堆積物を使って、どの時代にどのような環境変化が起こったのかを理解するためには、堆積物に年代目盛をできるだけ正確に入れる作業が欠かせません。しかし、日本海はたびたび隣接する海域から孤立してきたため、既存の年代推定手法を用いて詳細に堆積年代を求めることが難しいという問題がありました。
今回、佐川助教らの研究グループは複数の年代推定手法を組み合わせることによって、初めて日本海の過去100万年にわたる年代層序の構築に成功しました。また、日本海堆積物と東シナ海堆積物に共通する火山灰層を6層発見しました。この火山灰層を鍵層として両海域を対比したところ、大陸氷床が発達した氷期には日本海への暖流流入がストップし、表層海水の性質が大きく変化した時代が過去100万年に少なくとも6回起こっていたことが明らかになりました。今後、本研究で構築した年代層序に基づいて、日本海の過去100万年にわたる環境変動の歴史がさらに明らかになっていくことが期待されます。

雑誌名: Progress in Earth and Planetary Science
論文名: Integrated tephrostratigraphy and stable isotope stratigraphy in the Japan Sea and East China Sea using IODP Sites U1426, U1427, and U1429, Expedition 346 Asian Monsoon
発表者名: Sagawa T, Nagahashi Y, Satoguchi Y, Holbourn A, Itaki T, Gallagher S J, Saavedra-Pellitero M, Ikehara K, Irino T, Tada R
日本語要旨へのリンク
論文はこちら(出版社のページ)

【研究成果】日本で4例目となる化石鯨骨群集の発見

2018/04/04

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海底に沈んだ鯨の遺骸の腐敗過程に形成される「鯨骨群集」と呼ばれる特殊な生態系・生物群集があります.
今回,ジェンキンズ助教らの研究グループが北海道むかわ市の穂別地域から産出した千数百万年前(中新世)の鯨骨群集を発見し,日本古生物学会発行の英文誌「Paleontological Research」に論文が出版されました.

鯨骨の化石にAdipicolaという珍しい二枚貝が多数付着していました.Adipicolaは,現在の海洋でも鯨骨に付着し,腐敗で生じた硫化水素をエネルギー源としています.
今回の化石鯨骨に付着していたAdipicolaも現在と同じように,鯨骨から生じた硫化水素をエネルギー源とした鯨骨化石群集を形成していたものと考えられます.

鯨骨群集の化石が発見されることは珍しく,日本では1992年に第1号が発見されていますが,今回の報告でようやく4例目となります.

Adipicolaが密集するタイプの化石鯨骨群集は,イタリアや北海道初山別地域(日本海側)から見つかっておりましたが,北西太平洋側では発見されていませんでした.
今回の発見で,中新世においてAdipicola密集型の化石鯨骨群集が凡世界的に分布していることが確かめられました.

鯨類遺骸の腐敗環境は,深海の極限環境(熱水や冷水)への動物進出過程で進化的に重要な役割を果だしたとの仮説があり,化石記録の充実によってその仮説が検証されていくことが期待されています.

雑誌名: Paleontological Research, 22(2):105-111. 2018 (日本古生物学会の英文誌)
論文名: A new Miocene whale-fall community dominated by bathymodiolin mussel Adipicola from Hobetsu area, Hokkaido, Japan.
発表者名: Jenkins, R. G., Kaim, A., Amano, K., Sakurai, K. and Matsubara, K.
論文の解説へのリンク

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平成29年度 金沢大学 学位記・修了証書授与式が行われました

2018/03/23

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3月22日に平成29年度 学位記・修了証書授与式が行われました.
平松コース長より学位記,修了証書を受け取った卒業生と修了生の笑顔はとても晴れやかでした.

台湾の利吉メランジ中に産するトロクトライト―カンラン岩の岩石学から検討した東台湾オフィオライトの起源について

2018/03/23

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海洋/島弧深部物質の研究室の森下教授らは台湾の利吉メランジ中に産するトロクトライト(ハンレイ岩の一種)とカンラン岩の岩石学的特徴から、これらの岩石群(東台湾オフィオライト)の起源について検討した成果がMineralogy and Petrology誌に掲載されました。

台湾の利吉メランジ中には、玄武岩、ハンレイ岩、カンラン岩の岩片が含まれており、これらは東台湾オフィオライトと呼ばれる。オフィオライトとは過去の海洋プレートが陸上に露出したものであるが、台湾の場合は、複雑なテクトニクス履歴を持っているため、東台湾オフィオライトの起源(フィリピン海プレート、ルソン火山弧の影響を受けた島弧深部、ユーラシアプレートなど)については諸説ある。そこで、マントル起源の岩石群と考えられるカンラン岩やトロクトライト(ハンレイ岩の一種)の岩石学的特徴と周囲の岩石との比較を行った。この結果、ルソン火山弧の北方延長起源ではないことが明らかとなったが、フィリピン海プレートなのか、ユーラシアプレート起源であるかは、岩石学的に区別がつかず、将来的な年代学的検討が必要であるとした。本研究は、筆者の一人である小丸千尋さんの卒業研究の一部であり、この研究で使用した試料の一部は、金沢大学の野外調査学生実習で採取したものである。また、この研究は、別の研究に繋がっており、その成果も楽しみにしていて欲しい。

雑誌名: Mineralogy and Petrology
論文名: Petrogenesis of ultramafic rocks and olivine-rich troctolites from the East Taiwan Ophiolite in the Lichi mélange
発表者名: omoaki Morishita, Biswajit Ghosh, Yusuke Soda, Tomoyuki Mizukami, Ken-ichiro Tani, Osamu Ishizuka, Akihiro Tamura, Chihiro Komaru, Shoji Arai, Hsiao-Chin Yang, Wen-Shan Chen

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