ニュース・イベント

【研究成果】モンゴル・アルカリ塩湖の重金属汚染を観測

2022/05/10

地球事務

水質地球化学研究室のバスカさん(2022年博士修了・現博士研究員)・今井英吾さん(2017年学部卒業)・北島卓磨さん(博士後期課程3年)・関根康人客員教授(東工大ELSI所長)・福士圭介教授らの研究グループは、モンゴル南部乾燥域の湖沼の水質の5年にわたり長期観測し、河川により湖沼に運ばれるウランは乾燥に伴う蒸発により湖水に異常に濃集することを明らかにしました。地球年代学グループ・モンゴル国立大学・東京大学との国際共同研究です。

多くの重金属は濃度が増加すると、鉱物化したり鉱物に吸着したりして湖水に蓄積することはありません。これに対し本研究は大陸内部の塩湖の水質条件では、ウランはナトリウムや塩化物イオンと同様に溶液中に蓄積されることを示したことが成果です。

最近の気候変動や土地利用の変化により中央アジアの砂漠が進行しています。この結果は将来的に温暖化に伴い現地の湖沼群が消失したとき、湖水に溶解していた重金属含有塩が広範に析出する可能性を示唆するものです。溶けやすい物質は有害性が高いので、気候変動に起因する新たな環境問題となるかもしれません。

雑誌名: Journal of Hazardous Materials
論文名: Arsenic and uranium contamination of Orog Lake in the Valley of Gobi Lakes, Mongolia: Field evidence of conservative accumulation of U in an alkaline, closed-basin lake during evaporation
発表者名: G. Baasansuren, Fukushi, K., D. Davaadorj., Imai, E., Kitajima, T., U. Uyangaa, G. Tuvshin, Sekine, Y., Takahashi, Y., Hasebe, N.
論文はこちら(出版社のページ。2022年6月23日まで無料で閲覧できます)

【研究成果】火星にかつて存在した水の水質復元に成功(その2)

2022/04/26

地球事務

水質地球化学研究室の福士圭介教授、関根康人客員教授(東工大ELSI所長)、米国NASAジョンソンスペースセンターのElizabeth B. Rampe博士らは火星にかつて存在した水の水質復元に成功しました。前報(Fukushi et al., 2019)につづき、火星ゲールクレータにおける2例目の水質復元です。

前報では火星探査車Curiosityが探査した中で最も古い時代の水を対象とし、その時の水はほどほどの塩分(ラーメンスープ程度)、pHは中性かつ周りの岩石からエネルギーを取り出せる水であったことを示しました。今回はより新しい時代の水を調べ、その塩分は海水の数倍までしょっぱく、やや酸味がある水であることを示しました。さらに酸化還元非平衡はほとんど認められませんでした。火星の海や湖の跡には地球でみられるようなCa・Mg炭酸塩鉱物があまり認められません。比較的最近に近い水のpHが弱酸性であれば、それらは溶けてなくなったかもしれない。というのが本研究の推測です。

雑誌名:Geochimica et Cosmochimica Acta
論文名:Reconstruction of pH, redox condition, and concentrations of major components in ancient liquid water from the Karasburg member, Murray formation, Gale Crater, Mars
発表者名:Fukushi K, Sekine Y, Rampe E.B.
論文はこちら(出版社のページ。2022年5月11日まで無料で閲覧できます)

卒業・修了,おめでとうございました!

2022/03/22

地球事務

本日,令和3年度卒業式および修了式が執り行なわれました.
皆さん,卒業・修了おめでとうございます!

この2年間,新型コロナウィルスへの対応で本当に大変だったと思いますが,それを乗り越えてこうやって笑顔満載の皆さんの顔を見られてとても嬉しいです.
進学・就職などのそれぞれの新しい道で成功されることを祈念しています.おめでとうございました.

種子島沖でメタンハイドレート採取!

2022/01/19

地球事務

種子島沖の研究航海において,琉球海溝域では初めてとなるメタンハイドレートの採取に成功しました.

この研究航海は,神戸大学や琉球大学,高知大学,JAMSTEC,金沢大学の研究者らが「新青丸」(JAMSTEC)を用いて共同で,年末年始にかけて実施されたもので,本学からは地球惑星科学コースに在籍する加藤萌研究員(日本学術振興会特別研究員)が乗船しておりました.

研究航海では,種子島沖の海底に分布する泥火山において水や堆積物(主に泥)の採取や地球物理学的な探査が実施されました.海底の泥は,ピストンコアラ-という海底にパイプを突き刺して円筒状に堆積物を採取する採泥器を用いましたが,1つの泥火山(第15泥火山)の山頂付近から採取された堆積物中にメタンハイドレートが含まれていました.

琉球海溝域には,地球物理学的な探査によってBSR(Bottom Simulating Reflector;海底疑似反射面)と呼ばれるメタンハイドレートの存在を示唆する地下構造が検出されており,メタンハイドレートが広範囲に存在する可能性があります.
今後,泥火山から噴出されるメタンの起源や海底面付近までの供給メカニズム,周囲の海洋生態系との関係性などについての研究が期待されます.

<参考リンク>
神戸大学プレスリリース
金沢大学プレスリリース (理工学域版)

以下の図の説明.1.調査海域位置図と種子島沖第15泥火山海底地形図,2.ピストンコアラーから噴き出した海水(コアラ-内がハイドレート融解に伴って高圧になって水が噴き出したと考えられる),3.採取されたメタンハイドレート(白い固体状の部分がメタンハイドレート)

【国際シンポジウム開催 ※要申込 参加無料】12月9日 古水温復元ツール ー環境変動の理解を目指してー

2021/12/04

地球事務

地球温暖化など,人類はいま,様々な環境問題に直面しています.将来起きうる環境変動を予測するためにも,過去から現在の時間の流れの中で環境変化の実態とその要因を正確に捉えていく必要があります.

今回,地球惑星科学コース教員が推進する金沢大学先魁プロジェクト「海洋底掘削による環境変動/海洋プレート国際研究拠点の形成」が主催として,オンライン国際シンポジウムを開催します。興味のある方は参加登録の上、是非ご参加ください。

日時:2021年12月9日(木)9時-12時 (日本時間)
シンポジウムタイトル:Proxy for Paleotemperature Reconstruction: a key to understanding the past climate change
参加登録:https://forms.gle/qugV7P4M6fupbeux8

新任教員の石野咲子先生が着任されました

2021/12/01

地球事務

地球惑星科学コースに新しいスタッフが仲間入りしました.
石野咲子助教です.
環日本海研究センター所属教員として着任され,地球惑星科学コースの研究・教育にも携わっていかれます.
大気中を漂う小さな塵「エアロゾル」などの研究をしておられます.地球惑星科学コースの大気分野研究がますます充実してきましたね.

大学院生の追加・二次募集(博士前期課程および博士後期課程) <2022年4月入学生>

2021/10/19

全体管理

地球社会基盤学専攻地球惑星科学コース,誕生!

2022年4月に金沢大学大学院自然科学研究科が再編されます.これまでの大学院自然科学研究科自然システム学専攻地球環境学コースは,金沢大学大学院自然科学研究科地球社会基盤学専攻地球惑星科学コースに生まれ変わります.

博士前期課程-追加募集-

再編などに伴って,博士前期課程の追加募集があります.詳細は,以下ページに掲載されている学生募集要領をお読みください.
https://www.nst.kanazawa-u.ac.jp/admission/index.html

なお,申込締切は以下の様になっておりますのでご留意ください.
出願資格審査申請期間(出願資格の事前審査が必要な方):令和3年10月25日(月)~10月29日(金)
出願受付期間:令和3年11月15日(月)~11月19日(金)

博士後期課程-第二次募集-

博士後期課程については,若干名の2次募集を行います.詳細は,以下ページに掲載されている学生募集要領をお読みください.
なお,博士後期課程は専攻再編されておりませんので,地球惑星科学分野での入学はこれまで通りの「金沢大学自然科学研究科自然システム学専攻」で受験してください.
https://www.nst.kanazawa-u.ac.jp/admission/doc.html
出願資格審査申請期間(出願資格の事前審査が必要な方):令和3年11月16日(火)~11月22日(月)(土日を除く)
出願受付期間:令和3年12月 6日(月)~12月10日(金)

秋季オープンキャンパス(対面式)を11月6日に実施!(要申込み)

2021/10/19

地球事務

9月実施予定だった秋のオープンキャンパス(キャンパスビジット)が11月6日(土)に延期実施となりました.

金沢大学理工学域地球社会基盤学類は2021年11月6日(土)に午前と午後の2回(各回定員15名.先着順)実施します。
実際に大学キャンパスに来て実験室を見学したり、教員や学生に相談したりしたい人はぜひお申し込みを!

実施日:2021年11月6日(土)
内容:実験室見学や学生出展ブース見学。教員・学生への質問コーナーなど。
詳細・申込みは下記サイトへお越しください。
https://sites.google.com/view/geoandcivil2021tour/

【研究成果】便利な吸着予測モデル(ETLM)を解説

2021/09/09

地球事務

水質地球化学研究室では鉱物表面に対する元素の吸着・脱離挙動を予測できる便利な理論モデルの研究を行っております。研究室が対象としているモデルはジョンズホプキンス大学のスベルジェンスキー教授が1990年代半ばに提案し、以後20年以上にわたり大なり小なりの改良がおこなわれてきた拡張三重層モデル(ETLM)です。ETLMはパラメータが少ない割に、吸着の物理化学的な実態をうまく再現できる便利なモデルです。しかし、現在これを使っている研究者は世界に3人くらいしかおらず、絶滅の危機に瀕しております。

この危機を回避すべく、3年ほど前よりETLMの啓蒙活動を進めております。その第一弾として、道総研農業研究本部の小杉さん(当時北大農学部)に多大なご協力いただき、ETLMを汎用地球化学コードVisual MINTEQで扱うことのできるインターフェースソフトウェア”ETL(MIN)2”を開発・公開いたしました。

今回第二弾として、ETLMの理論的フレームワークの最新版をまとめたレビューをApplied Geochemistry誌に発表しました。ETLMによる解析方法に加えて、解析に利用する実験データの採取方法なども詳細に記載しております。オープンアクセスです。

雑誌名: Applied Geochemistry
論文名: Parameterization of adsorption onto minerals by Extended Triple Layer Model
発表者名: Keisuke Fukushi, Akihiro Okuyama, Natsumi Takeda, Shigeyori Kosugi
論文はこちら(出版社のページ)オープンアクセス

【研究成果】モンゴル・エルデネト鉱山周辺河川のモリブデン汚染の実態を解明

2021/08/17

地球事務

水質地球化学研究室のソロンゴさん(2020年博士後期課程修了)・奥山さん(博士前期課程2年)・福士教授らの研究グループは、東アジア最大の銅・モリブデン鉱山であるエルデネト鉱山周辺の河川水中の重金属濃度を通年で観測し、主要河川のハンガル川では夏季にモリブデン濃度がWHO飲料水ガイドラインを超過することを明らかにしました。さらにモリブデン汚染の原因は火力発電所で利用され川に排出される地下水と、沈殿池から河川に流出する鉱山排水であることをつきとめました(ソロンゴさんの博士論文の成果)。モンゴル国立大学・東京大学・石川県工業試験場との共同研究です。
通常、重金属は天然水に流出しても、堆積物に吸着することで濃度はすぐに減少します。一方、観測地点のハンガル川では10km下流でもほとんどモリブデン濃度は変化しません。この原因はハンガル川のpH条件(pH > 8)ではモリブデンがほとんど堆積物に吸着しないためであることを室内実験から明らかにしました(奥山さんの卒業論文の成果)。

雑誌名: ACS ES&T water
論文名: Mo Contamination in Rivers near the Erdenet Mining Area, Mongolia: Field Evidence of High Mobility of Mo at pH >8
発表者名: Solongo Tsetsgee, Akihiro Okuyama, Altansukh Ochir, Ariuntungalag Yunden, Enkhjin Odgerel, Taivanbat Batbold, Enkh-Uur Munkhsukd, Yoshio Takahashi, Takashi Munemoto, Masato Honda, and Keisuke Fukushi
論文はこちら(出版社のページ)

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